伝説の”レインボースーパーざかな”

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【おススメの本】僕が内田樹さんの本が好きな5つの理由

 

街場の現代思想 (文春文庫)

街場の現代思想 (文春文庫)

 

 

日々新聞やテレビのニュースでは政治のことや、突拍子もない事件など様々なことが話題となっている。そしてそういうトンデモナイ事件なんかを見るたび、「こりゃ、どうなってるんだ?」「日本って大丈夫なんかい?」っていう気持ちに僕はなる。

 そうしたモヤモヤは放置しておくと澱のようになって心の奥底に溜まってくる。なんというか煮え切らない日常である。そんなときに僕がよく読むのが・・・

 

内田樹さんの本。

 

内田樹さん、ご存じですか?

 

2011年まで神戸女学院大学で教授をされていました。レヴィナスというフランスの哲学者の研究者なんだけど、一般的にはAERAでコラムを書いていたり、新聞に論評を寄稿したり、本の著作が多いということで知られていると思う。

政治に関する発言も多いですね。

 

この内田さん、非常にメディアに頻繁に登場されていますが、なんといっても魅力的なのはその著作です。その都度いろんなテーマから書き起こしていますが、

 

独特の切り口で

日本の社会を見つめている。

 

そしてその論が面白い。

非常にユニークです。

 

僕は内田さんの本を読んでいてそのオリジナルな言葉の展開によく舌を巻きます。「よくそういう考え方ができるなー」と納得させられることも多い。人からオススメの本を聞かれたときには、大体、内田さんの本が1冊入る。それぐらい読み物としてはよく読ませてもらっている。

 

そういえば僕の友人で予備校の講師をしている人がいるけど、内田さんの文章はよく現代文の問題に取り上げられるそうですね。ご本人も著作の中で触れていた記憶がありますが、最近はかなり多い様子。それだけ学生のテキストとしては有望ということなんでしょうか。

 

ということで、もしまだ内田さんの著作に触れたことがないのであれば、1冊ぐらいお試しで読んでみるのをオススメします。

 

じゃあ、何を読めばいいのか?

 

 今日は不肖・森野が、内田さんをオススメする理由を5つに分けて解説。その著作とともにご紹介していきます。

 

理由1:一番の魅力は「舌鋒の鋭さ」

 

知に働けば蔵が建つ (文春文庫)

知に働けば蔵が建つ (文春文庫)

 

 

彼の本をついつい手にとってしまうのは、問題点への独特の「切込み方」です。たとえば「知に働けば蔵が建つ」という本で内田さんはいわゆる「ニート」について言及している箇所があります。なぜ、ニートは社会に出て働かないのか?に対して内田さんは、こういう考えを示しています。

 

ニートというのは多くの人が考えているのとは逆に「合理的に(あまりに合理的に)思考する人たち」なのである。彼らの世界は「意味のあること」に満たされていなければならない。それゆえ、彼らが他者ととりむすぶ関係は「等価交換」に限られている。交換の唯一合理的な形態が等価交換だと彼らが信じているからである。~中略~けれども彼らは根本的なことを見落としている。彼らが見落としているのは「学び」というのは「自分が何を学ぼうとしているかが、よくわからない」という「非一知」に動機づけられるものであること、「仕事」というのが「とりあえず何か余計なものを作り出して他人に贈る」という「非一等価交換」であるということである。

出典:「知に働けば蔵が建つ」内田樹 より

 

「働く」というのはある意味「不合理」なことと考えることもできます。労働を提供した分給料はもらえますが、その金額が自分の働いた量と本当に見合っているのか、には?がつくこともあるかと思います。はたまた残業分はカット、なんて会社もいまだにありますしね。いくら給料がもらえるからといっても、いろんな人に怒られ、いろんなあつれきがあり、結構なストレスもかかります。それって「合理的なのか?」と考えるとそうでもない部分がある。

 

内田さんが言う、ニートの人が「合理的」というのはそういう意味で「働くのは合理的ではないから、働くことを選択しなかった人たち」という意味かと僕は理解しています。だけど、そこに一個落とし穴があるという。

 

それは「学び」や「仕事」はそもそも「等価交換」ではない、ということ。「10の労働力を提供しましたから、10の賃金をもらう」ということだけではないということですね。そこには「人の成長」という視点が欠けています。つまり「そもそも働くことに何の意味があるのかわからない」・・・という状態でスタートしたとしても続けた先には、意外な発見がある、学びがある。最初はじめたころとは予想もつかない形で、結果的に「成長している」。

 

「仕事」や「学び」というのは、このはじめから「結果ありきの考え方では測れない」という内田さんの意見に僕は大いに賛同します。僕の少ない経験をもってしても、「これはそうだよなー」と断言したい。

 

このロジックはこちらの本にも活かされていてと僕は記憶しています。この本も面白かったですね。

 

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

 

  

理由2:内田樹さんは、実は古くからのブロガーである

「内田樹の研究室」というサイトをご存じでしょうか?

 

内田樹の研究室

 

内田さんのブログです。最近はかなり不定期の更新になっていますが、僕は一時頻繁に記事を読ませていただきました。だいぶ昔からブログをされているようです。

 

前にこのブログのどこかの記事で読んだのだけど、内田さんはご自身の思考や問題意識をまずはこのブログにつづって発表しています。実は初期の本の多くは、それを編集者が著作にまとめていく、という作業だったそうで、確かに、ブログで書かれていた言説がもっとシャープになって本に掲載されるというのを僕も何度も見たことがあります。

また逆もしかりで、依頼があった雑誌や新聞の寄稿を原文そのままで掲載もされていて、非常に内田コンテンツ満載の魅力あるブログになっています。

 

今日久しぶりに覗いてみたら「司馬遼太郎への手紙」という、これまた非常に面白いコンテンツでした。

 

タダで内田さんの文章が読める、というのは何とも素晴らしいと僕は思うのですが、いかがでしょうか?

 

理由3:内田さんは、実は「合気道の師範」である

これも内田さんの本をお読みになった人は知っていると思いますが、彼は若いころから合気道に取り組んでいて、今はご自身で道場を作られそこで師範も務められています。

 

それだけ長く「合気道」に取り組まれていることもあり「身体」に対する感覚が非常に鋭い、と僕はその著作を読んで感じています。人間の「身体」に対する考え方、そしてそこから導き出される「生き方」ということにも非常に深い洞察を意見されている。

 

その中で僕が特に好きなのがこの「修行論」。

 

修業論 (光文社新書)

修業論 (光文社新書)

 

 

武術の稽古を通じて私たちが開発しようとしている潜在能力がどういうものであるかは戦国時代でも、江戸時代でも、大筋では変わらないだろうと私は思っている。それはさしあたりは、実践的な意味での生き延びる力である。~生き延びるためにもっとも重要な能力は「集団をひとつにまとめる力」である。~複数の人間たちが完全な同化を達成した集団とはどのようなものであり、それはどのようにして構築されるのか。私は真に武道的な技術的課題は、そのように定式化できるだろうと思っている。それは端的に言えば「他者と共生する技術」「他者と同化する技術」である。

出典:「修行論」内田樹 より引用

 

 武術の極意というのは、つまるところ「生き延びる力の開発」である。それを端的に言うと「他者と共生する技術」に通じる。ちょっと論理が飛躍しているかもしれませんが、この内田さんの著書を読むと、その細かいディテールも理解できるかと思います。内田さんの文章は、ときに難解な言葉が入るけど、基本非常にわかりやすく、僕のような素人でもすいすい読めます。

 

この本も面白かった!

 

理由4:内田さんは、村上春樹のファンでもある

毎年ノーベル文学賞の季節になると、内田さんのもとには、村上春樹さんが受賞した際の前コメントの依頼があるという。毎年、前予想として名前は上がるけど受賞せず、という状態が続いているので、内田さんもさぞかし大変だろうと思っているのだが・・・

 

なぜ、彼にそんなコメントの依頼がくるのかというと・・・内田さんは村上春樹のファンだからである。そこでこんな本を出している。

 

村上春樹にご用心

村上春樹にご用心

 

 

 

もういちど村上春樹にご用心 (文春文庫)

もういちど村上春樹にご用心 (文春文庫)

 

 

ぼくはこっちの「もう一度村上春樹にご用心」を読んだけど、非常に納得のいく批評をしています。というか、これを読むと、村上さんの小説の意味合いを一段と深く読み取ることができ、その作品をもっともっと楽しむことができる。

 

たとえばこんなくだりがある。

 

私たちもおそらく例外ではない。「万力にはさまれた猫の手」のような「無意味でひどすぎる」経験が、次の曲がり角で私たちを待っているのかも知れない、かなり高い確率でと村上春樹は言う。だから角をまがるときは(ムダかもしれないけれど)注意をした方がいい。そしておそらくそのような危機の予感のうちに生きている人間だけが「世界の善を少しだけ積み増しする」雪かき的な仕事の大切さを知っており「気分のよいバーで飲む冷たいビールの美味しさ」のうちにかけがえのない快楽を見出すことができるのだと私は思う。

出典:「もう一度村上春樹にご用心」内田樹 より

 

村上春樹の本が好きなら、この内田さんの文章の意味はすぐにわかるだろう。どれも村上春樹の小説からのモチーフを使って文章を作っているので。逆に読んでいない人にとっては・・・??かもしれませんね。

 

この本では村上作品の大事なテーマになっている「トラウマ」、「邪悪なるもの」についても内田さんなりの考察が加えられていて、僕は非常に納得しました。そしてこの本を読んだおかげで、より村上春樹の作品への理解が深まったとも思っています。

 

文芸評論家の批評ってなんかわかったような、わかんないようなという感じだけど、これについては深い腹落ち感があるオススメの一冊かと。

 

理由5:内田さんは、フランスの哲学者・レヴィナスの研究者でもある

元々内田さんは、フランスの哲学者・レヴィナスの研究者として活動していたようだ。なので哲学や現代思想に造詣が深い、というかそれが本職である。彼の評論なんかを読むと、そうした哲学や現代思想の方法論から問題にアプローチしているところもあって、それも面白いのだが。

 

哲学とかわからん!という方にもおすすめできるのがこちらの本。

 

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寝ながら学べる構造主義 *3

 

 

  「構造主義」についてとてもわかりやすく書かれた1冊。この本では、主にソシュール、ミシェル・フーコー、ロラン・バルト、ジャック・ラカンを扱っていますが、僕が一番衝撃を受けたのは、文化人類学者のレヴィ=ストロースの考え方でした。

 

哲学・現代思想に興味はあるけど、どっから入ったらいいかわからない、という方。この本からいくといいかもしれません。

 

まとめ

ということで、5つの側面から内田樹さんの魅力をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。内田さんはここで紹介した以外にも、多数の著作を手掛けています。

僕もすべて読んでいるわけではないですが・・・読んで面白かったのは・・・

 

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

 

 

 

困難な成熟

困難な成熟

 

 

 

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

 

 

 

呪いの時代 (新潮文庫)

呪いの時代 (新潮文庫)

 

 

 

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

 

 

 

邪悪なものの鎮め方 (文春文庫)

邪悪なものの鎮め方 (文春文庫)

 

 

 

ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)

ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)

 

 

というところでしょうか。

 

というか、読んだ本はすべからく面白いのがこの人のすごいところなのです。

 

ある種、大々的な宣伝・なぜそんな宣伝を?と思う人もいるからもしれないが、面白い本は、やっぱり面白いのです。世には面白い本があれば、一方でつまらない本もあります。その面白い・つまらないは、もちろんその読者の嗜好性にも強く関係してくるのだけど、読む本がどれもそれなりに面白い!という人もなかなかいません。ということで、本好きとしては、それを人にオススメしない手はない、と思ってこういう記事を書いています。

 

みなさんももしよければ手にとってみてください。

 

今日はこのへんでおしまい。

 

 

もうひとつこちらの記事もいかがですか?

 

morinokanata.hatenablog.com

 

 

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