伝説の”レインボースーパーざかな”

好きな本や音楽のこと、日々の暮らしを気ままにつづる雑記ブログ。

『すごい人のすごい話』/荒俣宏~世界が広がるオススメの1冊

今日ご紹介したいのは「すごい人のすごい話」というタイトルの本なんですが。。

 

読み終わってそこはかとなく感じた・・・これは、

 

すごい人が聞いたすごい人のすごい話」

 

なんてったって「物知り博士」の荒俣宏さんが、話を聞きたいという人たちを訪ね、たーっぷりと話を聞いた対談集。面白くないわけがない。

 

すごい人のすごい話

すごい人のすごい話

 

 

対談はもちろん「話し手」が主役。主役が語ることが面白いかどうかがコンテンツの核となる。ただそれを引き立てるのは「聴き手」の存在。

 

聴き手が上手に話を引き出さないと面白くならない。

 

「聴き手」にはその分野での知識が求められるだろうし、話を深め広げていくにはそれ相当の教養も求められてしまう。出てきた話を違う話と結び付け展開させていくのも「聴き手」ならではの役目。

 

この本は主役が「すごい人」であるのは間違いないんだけど、対談が面白く読めるのは、やっぱり荒俣さんたる聴き手の存在が大きい。

 

15人の人が登場します、この本には。

専門とする分野は本当にバラバラ。ウィルスの専門家から「渋滞学」なる交通渋滞を研究する研究者、脚本家、100歳を超えたおばあちゃん・・・etc

 

ホントに多岐にわたる人たちに話を聞いているが、荒俣さんの当意即妙の質問から話がどんどん広がる。話の接着が見事なのだ。

 

400ページ以上ある本だけど、読んでいて・・・

あっという間に時が過ぎた。

 

面白い時間を過ごさせていただいた。

どんな本なのか?早速この本の魅力をご紹介していきます。

 

①変わった視点から独自の研究をするユニークな人たち

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この本は主に4つのブロックから構成されているんですが、一応それぞれテーマがあります。

 

最初のテーマは荒俣さん曰く「勇気が出る話」ということなんですが、僕が読んでみて感じたのは「変わった視点で研究をしている変な人たち」

 

第1章 新しいからおもしろい、未知と未踏

Ⅰ 竹村公太郎さんと楽しむ土地からの発想

Ⅱ 西成活裕さんと体を張って実験する渋滞学

Ⅲ 高田礼人さんと追跡する「変わり者」ウイルスの戦略

Ⅳ 板見智さんと検証するハゲの噂

 

出典:「すごい人のすごい話」 荒俣宏

 

特に最初の竹村さんの話がすごい新鮮でした。

 

この方、公益財団法人・リバーフロント研究所の代表理事ということで、これだけではさっぱりどんな方かわからないのですが・・・

 

元々は建設省でダム・河川事業を担当していた官僚の方。

 

現役を引退後、その専門であった地形や気象、下部構造という変わった視点から日本や世界の文明を論じていて注目を集めている方なんですって。

 

で、そうした専門性から竹村さんは日本の歴史も変わった視点で論じている。

 

一番面白かったのは・・・

 

江戸時代、吉原の遊郭へ向かう男たちに川の堤防を踏み固めさせていた、という話

 

・・・・

 

・・・

 

どういうことか?

 

江戸時代、幕府は明暦の大火(1657年)という大火事があった後に、それまで日本橋にあった吉原の遊郭を浅草の裏へ移転させたらしいんです。

 

で、その吉原へ向かう道は、荒川の洪水を防ぐために作られた「日本堤」という堤防が道路になっていたらしい

 

こちらの絵図を見たらわかるようにこの堤は、実際多くの人が通っていた。

たくさんの人が道を歩けば、その道は踏み固められ丈夫になります。

これがポイント。

 

安藤広重の絵図が見られます

 

www.ndl.go.jp

 

当時の堤防はもちろんコンクリなんかじゃなくただの土です。土の堤防はモグラやヘビが巣穴を作ると脆くなって、堤防の強度が弱まってしまいます。

 

もしそれで洪水が起きて堤防が決壊したら困る。

 

江戸じゅうが水浸しになっちゃう!!

 

だから、、、幕府は、吉原へ通う男たちの移動を見越して、

浅草裏へと遊郭を移したというのが竹村さんの推論。

 

男たちのいそいそ、うきうき・・・そんな色欲が堤防を強化することにつながっていたなんて・・・

 

うっそーーー!

って話っす。

 

江戸幕府が男たちの欲望を利用して、公共のインフラを整えていたかも、なんて。。

 

ただこれはあくまで竹村さんの仮説。史実かどうかは史料の裏付けがされていないので疑わしい。真実かどうかはわからんが、ただそれでもこういう話にはロマンを感じる。

 

このブロックは、こうしたちょっとユニークな視点で研究している方がいろいろ出てきます。渋滞の発生のメカニズムとその解消方法を研究している西成さんの話も面白いですし、ハゲの研究をする板見さんの話も超おもしろかった。

 

板見さんなんか経歴を見ると、ずっと大学で皮膚の研究を行っていて、2006年からは大阪大学医学部付属病院の「脱毛症外来」なるもので働いているという。

 

ハゲって男の悩みの中ではかなり大きなものですよね。

 

 ちなみに板見さんによると・・・

 

「シャンプーを使うと毛が抜ける」とか「頻繁に頭を洗うのはよくない」という都市伝説的な噂はたいがい根拠のないウソみたい。

 

「毛穴に皮脂が溜まると毛が抜けやすい」っていろんなCMでも見てるような気がするけど・・・

 

これも板見さんはきっぱりと否定!!

 

でもやっぱり遺伝は関係するみたいΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン

 

などなど巷でいわれている「ハゲ」の様々な噂を検証しつつ、脱毛の仕組みや今ハゲに有効と言われている薬のことなど、他人事ではない髪のことをあれやこれやおしゃべりしているのが楽しい。

 

②「日本の底力」と③「生命」の話

二つ目のブロックと3つ目のブロックは「日本の底力」と「生命」の話だ。

 

底力のブロックでは、天皇陛下とともに海の環境を見つめてきた林公義さんの話、日本のポップスと演歌の深~い関係、など日本が培ってきた文化的・自然財産についてその道の達人から話を聞いている。

 

3つ目のブロックの生命の話も面白い!オランウータンの研究者から、クジラ学の研究者、分子生物学の福岡伸一さんに、さらに救命医療の最前線に立つ医者が登場する。

 

人の命や生物の命、について。はたまた動物の命とともに生きてきた日本人の営みがテーマ。僕らはふだん、仕事のこととか家のこととか自分の身の回りのことしか気にしない生活を送っているけど、こういう本を読むと視野が広がりますね。

 

直接、何かの役に立つという話ではないですが、ものごとを考えるきっかけにはなる。時々はそういうインプットが僕たちには必要なのです。

 

④「人生の壁と坂に挑戦してきた人たち」

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最後はなかなか難しいテーマだ。

 

荒俣さんの本では「挑戦して悔いなし 人生の壁と坂」という形でテーマをくくっている。

 

確かにそういうくくりで見るのが自然なんだろうけど、僕はこのブロックは「人の人生」というのが大きなテーマになっていると思った。

 

それは2013年に逝去されたコラムニストの四至本アイさんの話と作家・脚本家である早坂暁さんのお遍路さんの話が強く印象に残ったから。

 

四至本さんは1910年の生まれというから日露戦争のすぐあと、明治の後半に生まれたことになる。

 

この時代を生きた人々の話が聞けるというのはそれだけで貴重な経験。

 

僕らは日本の近現代史など教科書や本で知るぐらいしか機会がないから・・・四至本さんの話も当時を感じられる超リアルな話がてんこ盛りでした。

 

僕が四至本さんの話をとおして感じた結論をいきなり言いますが、

 

昔の日本は相当貧しかった。

 

四至本さんによれば、当時農家の中には小作農の下に「農奴」と呼ばれる人々が実際にいたというし、そうした家の子が東京に身売りされ安い値段で売春させられていたとか、身につまされる話がわらわらと出てくる。

 

四至本さんは女性の解放運動に携わっていたけど、女性の参政権もなかった戦前の日本は女性への扱いも、今に比べれば圧倒的に配慮がなかった。

 

近代日本は都会と農村。

男性と女性の間にまだ大きな格差があった未成熟な国家だったのだ。

 

そうした見えにくい歴史をもう一つあぶりだしてくれたのが作家・脚本家の早坂暁さんの話。

 

早坂さんは四国・愛媛の生まれ。遍路道に面したところに家があったということで幼いころから「お遍路」をするさまざまな人を見たり話を聞いてきたという。

 

その逸話がどれも想像以上に深い。

 

足が萎えているのに両足にタイヤをつけ引っ張りながら遍路する人。

ハンセン病の人が村から放逐され、遍路していたという道。

江戸の頃、飢饉から生き延びるために親が子どもに人肉を食べさせていたことがわかり、その罪の意識から遍路に跳び出した男の話。 などなど。

 

自分では引き受けられないほどの大きく深い問題を抱えたとき、人は遍路に出るのだという。

 

四至本さんの話も早坂さんの話も、昔の日本の厳しく辛い一面が垣間見える。

 

それは人の生きざまと共に「死に方」までもが見え、僕は過去の日本を生きた人たちの辛さ・厳しさを感じずにはいられないのである。

 

まとめ

この本はさすが「荒俣さんが選んだ人」ということで、単純に人に話したくなるようなオモロイ話から、人の生死にまつわる辛くも厳しい話まで、とっても振れ幅が大きい本になっている。

 

だからこそ言い方は悪いけど、面白い。

 

この手のオムニバス対談集は基本「広く浅く」です。興味を持ってもらうきっかけ、みたいな位置づけなんだろうなと思います。

 

確かにこの本も15人もの人が対談しているだけあって、それほど深く問題を掘り下げられていはいない。

 

それをこの手の本に求めるのはあまりに無理というもの。

 

ただ自分が日々の生活に追われなんだか閉塞感に包まれているときに読むと、視野がなんだか広がる気がして・・・好きですね、こういうの。

 

そしてこの本は、こうしたジャンルの対談集としてはなかなか面白いものでした。

買うほどのものではないかもしれないが、図書館で探してみる価値はあると。

ざかなは思います。

 

最後に・・・もしこの本に少し興味を持ったという方のために・・・

どんな方がほかに出ているのか、引用しておきます。

 

第2章 知れば知るほどすごい、日本の底力

Ⅰ 鈴木一義さんと発掘する幕末大名の幅広い知性

Ⅱ 林公義さんと推理する天皇陛下の自然学

Ⅲ 船曳建夫さんと聴き惚れる演歌の神髄

Ⅳ 町山智浩さんと解析するコミック王国アメリカの影響力

 

第3章 生き物は生き物に学べ、生命の叡智

Ⅰ 鈴木晃さんと発見するオランウータンの高度な社会

Ⅱ 小松正之さんと誇る日本人のクジラ愛

Ⅲ 福岡伸一さんと再確認する生命の無常と有償

Ⅳ 浜辺祐一さんと覚悟を決める「人の死に方」

 

第4章 挑戦して悔いなし、人生の壁と坂

Ⅰ 迫慶一郎さんと乗り込む中国での街づくり

Ⅱ 四至本アイさんと突破する近代日本の大きな障害

Ⅲ 早坂暁さんと白装束で巡る死出の旅路

 

出典「すごい人のすごい話」 荒俣宏

 

 いかがでしょうか?

 

興味を持たれた方がいれば手にとっていただけると嬉しいです。

 

きょうはこのへんでおしまい。

 

 

すごい人のすごい話

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