【おススメの本】『レイヤー化する世界』佐々木俊尚~近い将来の国のあり方を考える!
いずれ、国そのものがなくなっていくかもしれない!?
そんな大胆な将来像をあの佐々木俊尚さんが提示されていて、驚いた。
先日は森野が好きな歴史小説のレビューを書いてみたが、森野は決してそうした古い小説ばかり読んでいるわけではない。。。
言い訳として。主張として。
レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2013/06/05
- メディア: 新書
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一応弁解しておくと、森野は広い視点を持ちたいのでなるべくいろんなジャンルの本を手に取ろうと思っている。ということで、たまたま手に取ったのがこの本。
本のタイトルにあるとおり、「未来はレイヤー化」していく、この「レイヤー化」がこれからのキーワードというのが佐々木さんの視点である。
どういうことだろうか?
今日はこの佐々木さんの本から、未来の姿についてちょっと考えてみる。
20世紀のシステムはすでに「終わり」を告げている
まず、二十世紀のシステムはすでに終わっている。。。
前提として。
これは多くのメディアでいわれていることなので、今更というところでもあるけど、佐々木さんの表現を借りると、こんな感じ。
二十世紀のシステムでは、多くの人々は巨大な企業に集まって、仕事をしていました。それは企業のなかに「同じ会社の仲間」という連帯感を生み、それが社会の結束につながり、民主主義を支える土台となっていたのです。
でも大量生産システムが終わり巨大企業が人をたくさん抱えなくなってくると、組織の仲間意識は薄れていきます。仕事や富が世界中に散らされることによって、企業のなかや国のなかの結束もだんだん弱まっていきます。だから民主主義の土台が揺らいでいるということなのです。
これは先ほどの二十世紀の世界システムを逆転させてしまっています。
出典:「レイヤー化する世界」佐々木俊尚 より
確かに二十世紀までの先進国のあり方は、企業の一員となって働くことが、会社の連帯感となり、それが社会の連帯になっていた。それは僕が働き始めた1990年代の末にもかろうじてあった文化でした。
しかし2000年以降、
その様相はすっかり変わった感がある。
個人が会社にコミットしすぎない、ということが生き方の一つとして認められるようになった。欧米などでは転職は当たり前、そんな風潮が日本にも浸透し、「終身雇用」という言葉が過去の遺物になったのもこのころ。そんな会社にコミットするのではなく、もっと広く「社会」に個人がどうコミットしてながら自分を成長させていくか?という個人の生き方が問われるようになる。そして結果、それらが市場経済をより活性化させていく、という形が今の風潮になっている気がする。
仕事も、森野の業界なんかはとにかく新しいアイデアで現場に風穴を開けるような斬新なものが求められている。そんな中で、いろんな人と多様なチームを組むようになり、双方の連絡もLINEやFACEBOOKなどSNSを使うのが当たり前の時代になった。
いろいろと世の動きを見ていると、会社の中だけでなく社外の人、いろんな業界を横断してのプロジェクト。これまでのような会社の中でずっと同じ仕事をする、というスタイルが大きく変わっているのを感じている。
「レイヤー化する世界」とはどういうことか?
では本題。佐々木さんの言う「レイヤー化」とは何なのか?
レイヤーは「層」のことですね。フォトショップとか加工ソフトで出てくる、あのレイヤーのこと。そのレイヤーという比喩を用いて、佐々木さんはご自身の立場をこう説明しています。
たとえば私という人間は、佐々木俊尚というひとりの独立した個人だけれども、一方でさまざまなレイヤーも持っています。
日本人という国籍のレイヤー。
ジャーナリストという職業のレイヤー。
兵庫県西脇市出身という出身地のレイヤー。
愛知県立岡崎高校を卒業したという出身校のレイヤー。
和食が好きで、料理をつくるのが日課という食の好みのレイヤー。
登山とランニングを愛好しているという趣味のレイヤー。
そういう無数のレイヤーを積み重なっていった結果として、私という個人がある。
出典:「レイヤー化する世界」佐々木俊尚 より
個人の属性。またはその個人が活動する「層」ということでしょうか。
旧来のシステムでは、そうした細かな個人の属性というのはコミュニケーションを経ていく中でわかってきたものでした。まず人と人の「出会い」があり、会話をとおして、お互いの出身地とか趣味とか共通点を見つけ、仲良くなっていく。それが旧来のコミュニケーションのあり方でした。よね?
しかし、今は違う。
むしろ「出身地」とか「趣味」が土台となって、人と人が出会っていく。
そんな時代になっています。
それを可能にしたのは、ネット・SNS。
もっというとFecebookとか。
SNSでは、人の趣味や好みなどから「この人気が合うかも?」というその人の嗜好性からアクセスしていくというコミュニケーションが可能になった。
ブログもその一つといえば一つ。
今日本でもクラウドワークスが盛んに取り入れられるようになっているが、たとえば自分の<文章術>というレイヤーからネットを通じて仕事に結びつける、そんな仕事の仕方も可能になってきた。
そして、佐々木さんは、
そういったネット上の<場>が未来を大きく変える可能性を秘めているのではないか、
というわけです。
じゃあ、その<場>を作っているのは誰かというと・・・
国家ではなく一部の「超国籍企業」なのです。
アップル、グーグル、アマゾン。
そうした企業が作るプラットフォームが国家の枠を超えて、世界中の人たちの生活に浸透していく。そのことが、国家がこれまで当たり前に持っていた権力を削いでいくことになる。ゆくゆくはそれは国家が解体するというところまで進むかもしれない。
というのが佐々木さんの論です。
アップルとかの企業のあり方を見ていると、そうしたネットの場が大きな力を持っているのは確か。そして、そうしたテクノロジーが国家の枠を超え始めている、というのはすでにある事実として間違いないだろう。
それが国の解体というところまでいくかどうか。
このからくり、本書ではもちろんもっと丁寧に佐々木さんが解説している。興味ある方はそちらをぜひ。
そうした時代に私たちはどう生きていけばいい?
こうした国の枠組みよりも<場>が重視される時代において、どう生きていけばいいのか?佐々木さんは二つの戦略を示している。
まず一つ目。ちょっと抽象的だけど引用するとこんな感じ。
私たちは光の帯となり、さまざまなレイヤーの積み重なったなかで生きています。それぞれのレイヤーで、他の人たちや他の会社、他の部分としなやかにつなっていくという戦略。
ちょっとこれだけではわかりにくい。
もうちょっと引用。
レイヤーで横に広がる私たちは、どこからどこまでが自分で、どこから先が他者なのかははっきりはしていません。でもその境界線のあいまいさを気にする必要はない。逆に境界線がはっきりしないからこそ、自分と他者がしなやかにつながることができるのです。
そういうあいまいさを受け入れ、レイヤーごとに他者とつながり、そのさまざまなつながりの総体として自分をつくりあげていくという考えかた。これが第一の戦略です。
出典:「レイヤー化する世界」佐々木俊尚 より
これでもやや抽象的だけど、要は自分のレイヤーに従っていろんな「顔」を持ち、その顔・顔でつながれる人を増やしていく、ということでしょう。
これはつまり・・・
未来を生きるためには、
より能動的にならないといけない。
ということか?
オレ、Facebook・・・あんまやってないんだけど・・・
大丈夫かな??
実名でのつながりにまだ抵抗がすこしあるんだけど、そんなんでは来る未来を生き残ることはできない、ということですかね。
あと、もう一つ佐々木さんは指摘している。
第二の戦略は、<場>という権力との共犯。
<場>はテクノロジーそのものです。それは時にはフェイスブックであり、グーグルであり、ラインであり、スカイプであり、アップルである。そういうテクノロジーを使いこなし、<場>を利用し、<場>に利用されるということ。つねに<場>は人びとを管理し、支配し、そしてさまざまなデータを吸いあげて人びとの行動を奪い取ります。しかしそういう収奪も織り込み済みととらえて、承知のうえで<場>のテクノロジーを利用していくということ。これが第二の戦略です。
出典:「レイヤー化する世界」佐々木俊尚 より
なるほど。織り込んで使っていこうということですね。
確かに<場>を使う、使わないは個人の自由なんだけど、最近の周りの状況を見ていると明らかに使っていないデメリットのほうが大きくなってきている気がする。そのメリットを十分享受しつつ、<場>と上手に付き合っていく。
これしかないとは言わないけど、テクノロジーが暮らしを便利にするのは間違いない。あとは世の流れと自分の立ち位置の中で、どこまでコミットしていくか、ということではないでしょうか。
終わりに
ということで、これまでの部分をまとめていくとこんな感じ。
- これからの社会は、テクノロジーによる<場>がより重要になってくる。
- 個人の属性も、どんどん「レイヤー化」し細分化していく。
- 個人は、レイヤーの中でいろんなつながりを持つことが大事
- メリットとデメリットを織り込んで、<場>を使いこなしていく。
こんなところでしょうか。
この本の参考文献にもあったけどこの未来像は、リンダ・グラットンの「ワーク・シフト」に近いものがあると個人的には思った。
また他に本書では今後の未来のあり方を予測するにあたり、これまでの世界の歴史を佐々木さんなりの視点で構造化している。中世・近代を主に時代分析しているんだけど、これがなかなか面白い。
国家の「ウチ」と「ソト」の関係。
国と国の境界、そこから国が国を支配する植民地政策のこと、さらにそこに経済活動もうまく取り込んで分析していて、この歴史観には思わず納得した。
本書では中世・近代のこの間の歴史の振り返りが少々長く、なかなか先に進まない感があるが・・・
これまでの歴史をおさらいしながら、未来の姿を考えていく。
人間社会の立ち位置を一度おさらいして、
未来のあるべき方向性を考える。
この即席で書いている記事では、この本の全容をとらえることは難しい。
歴史・今・未来へと目を向ける佐々木さんの複眼的な視点は見事なものだ。
興味のある方はぜひ本書をとってみてください。
なかなか面白いと思いますよ。
今日はこのへんでおしまい。
レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2013/06/05
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