伝説の”レインボースーパーざかな”

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村上春樹「女のいない男たち」文庫版が出たのでその読みどころをご紹介!

 

女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

 

 そういえば、

この前、本屋に立ち寄ったときに、

村上春樹さんの「女のいない男たち」が

平積みされていました。

 

 出たんですね、文庫版が。

 

僕は単行本で読みましたが、

非常にいい本だと思いました。

 

タイトルどおり、

「女のいない男」が主人公の

短編が6つ収められている。

 

この「女のいない男」という言葉・・・

 

ずっと女がいないというのではなく、

 

妻に先立たれたり、友達の彼女だったり、

女が「今は」いない、

女の不在感や喪失感をまとった男たち、

という意味に僕はとりました。

 

実際、そういう話が多い。

 

村上さんというと、

どうしても「1Q84」とか、

海辺のカフカ」とか、

とかく「長編小説の作家さん」という

イメージがあります。

 

もちろん、

そういった長編の物語だからこそのよさもあります。

 

だけど、僕としては、

短編も相当オススメだ、と。

声を大にして言いたいと思う。

 

短編って、

長編のような深いところまで潜って

物語を体感することはできないけど、

短いストーリーだからこそのよさがある。

 

エッセンスだけ詰めるとか、

短いからこそ「切れ味」をあげるとか、

短編には短編の良さがあるんです。

 

この本もそんな短編の良さが

たっぷり詰まっています。

 

ネタバレにならない程度に、

6つそれぞれを簡単にご紹介。

 

「ドライブ・マイ・カー」

舞台俳優・家福は女性ドライバーみさきを雇う。死んだ妻はなぜあの男と関係しなくてはならなかったのか。彼は少しずつみさきに語り始めるのだった。

出典:「女のいない男たち」より引用

 

夫は妻のことを本当に理解できるのか?

そもそも男は女のことがわかるのか?

人は人としてどこまでお互いを知ることができるのか?

 

嘘、欺瞞、欲望、見栄・・・

 

いろんな感情が渦巻く中で、

本当に人は人のことがわかるのか?

 

そんなことを考えさせられました、

僕は。

 

話自体は家福の思い出話なのですが、

聞き手となる無口な女の子、

みさきのキャラも妙に印象に残ります。

 

「イエスタデイ」

完璧な関西弁を使いこなす田園調布出身の同級生・木樽からもちかけられた、奇妙な「文化交流」とは。そして16年が過ぎた。

典:「女のいない男たち」より引用

 

この物語が、

6編の中では一番明るい、

というか読みやすい。

 

ただ軽い分、

それほど後は引かない。

そして軽いのですが、

とても切ない小説ではある。

 

完璧な関西弁を使い、

田園調布で暮らす木樽。

 

と、とてもちぐはぐなキャラ、

木樽。

 

その木樽と彼の恋人、そして僕が

この物語の核になってくるんだけど、

この木樽がそこでも

いろんなちぐはぐなことをする。

 

それは一見すると奇妙な提案で、

万人には受け入れられないものなのだけど。

 

そのとき、

木樽がおかしなことを言ったのには、

理由があった。

 

人と人の関係は、

なかなか一筋縄にはいかない。

ましてやそれが、

男と女の関係になると。

 

「独立器官」

友人の独身主義者・渡会医師が命の犠牲とともに初めて得たものとは何だったのか。

 

僕は女性のことがよくわからなくなることがある。

同じ人間なんだけど、

やっぱり全然違う、とも思ったり。

どういう感覚で生きているのか、

本当にわからなくなることがあるんだけど、

この作品もそういった女性(全般ではないが)

の不可解さを男の視点から描いている。

 

そうした男と女がつながると・・・

 

ときには

大きな混乱に見舞われることにもなる。

 

でもそうしたことがない人生なんて・・・

おもしろいのだろうか?

 

このあたりから、

物語がだんだんと暗くトーンが落ちていきます。

 

シェエラザード

陸の孤島である「ハウス」に閉じ込められた羽原は、「連絡係」の女が情事のあとに語る、世にも魅惑的な話に翻弄される。

ノーマルな人ってなんだろう?

 

人には多かれ少なかれ、

異性に対して過剰な思いを抱くことがある。

その人が好きであればあるほど。

 

それが想いだけで留まることがほとんどなのだが、

あることをきっかけにして、

その思いの強さがゆえに、

行動に出てしまうことがある。

 

暗く陰鬱なカタチで。

 

そしてそのカタチに

一種の快楽を感じてしまう。

 

それは他人から見たら、

「変態」の一言で片づけられてしまうのだが、

そんなに人生、

簡単なものではないですよね。

 

と僕なんかはこの作品を読んでつくづく感じた。

 

「木野」

妻に裏切られた木野は仕事を辞め、バーを始めた。そしてある時を境に、怪しい気配が店を包むのだった。

 

この作品が、僕は一番好き。

 

一人の人間の力ではどうにもならない、

抵抗しても無駄なことがこの世にはあるんだと、

暗喩的に気付かされる作品。

 

不吉なことを暗示する比喩的なものが、

いろいろと表れ、木野の周りを取り囲む。

 

木野はそこから逃げるのだが・・・。

 

「女のいない男たち」

ある夜半過ぎ、かつての恋人の夫から、悲報を告げる電話がかかってきた。

 

これまでの村上さんの短編の中でも

かなり不思議な作品。

 

これはぜひ・・・

 

読んで感じてください。

 

おわりに

 男と女をめぐる

めくるめく6つの話。

 

恋、欲、肉体への渇望・・・

交錯する思い、

 

男と女の関係って、

それこそ多義的で、

一様に割り切れない。

 

そんな人がつながる危うさ・難しさ・複雑さを

僕は感じました。

 

そうした男女がつながることで

一人の人生に破壊的な影響を与えることも、

人生ではままあります。

 

そういう意味では、

そんな危うい男女の関係なんてないほうがいいのでは?

なんて思う人もいるかもしれません。

 

というか、今の世間では、

そういったこと、

特に不倫なんかになってしまうと、

非常に不寛容というか、

一義的に悪とみなす風潮が強いですね。

 

でもそうしたことは恐らく、

今後もなくなることはなさそうだし、

そうしたことがまったくない世の中というのも

何かが欠けていて、

素っ気なく味わいのないものなのだと、

思います。

 

村上春樹さんって

かなり好き嫌いが分かれますよね。

 

たとえば、

これから村上春樹を読んでみようかという人、

長編を読んだけど、

イマイチ、ピンとこなかったという人は、

この短編から試してみてはいかがでしょうか?

 

こうした良書が、

ランチ1回分ぐらいの値段で、

楽しめるというのは本当に幸せなことだと

僕は思うのですが。

 

今日はこのへんでおしまい。

 

そういえば、

ノーベル文学賞の発表って明日ですね。

 

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